足らぬ足らぬは工夫が足らぬ

” 得ること、拡大することばかりを考えて生きてきました。でも平均寿命の半分を過ぎたころから、来るべき死に向かい、閉じていくこと、手放すことを身につけねばと思うようになりました。大変なギアチェンジです。”

朝日新聞編集委員だった、稲垣えみ子さんはこう言った。
ホセ・ムヒカの言葉にも(僕はムヒカの顔も好き)、これに近しいものを感じる。

 

自分に照らし合わせてみると、やはり得ること、拡大することばかりを目指して生きてきたと思う。それは今でもきっと変わらない。まだ新しいバーナーが欲しいし、ランタンも買い換えたい。アレも欲しいコレも欲しい、もっともっと欲しい欲しがりさんだ。人生の達人になんてなれない。でも心のどこかに、稲垣さんの言葉がすっと入り込む隙間があることにも気づく。少しは歳を重ねたせいだろうか。『閉じていくこと、手放すことを身につけねば』というこの気持ち、ひどく腑に落ちる。

我々の欲望に際限はない。どこまで欲しがれば、どこまで手に入れれば満たされるのか。その到達点に本当の幸せはあるのか。きっとそれは、違うんじゃないかってことに、僕たちは気づき始めている。

断捨離やミニマムな暮らしが取り上げられて久しい。身の周りのものを無くしてシンプルに生きるという考えは深く理解できる。でも、だからといって、僕自身がそういう生き方をしたいかというと、それも極端な気がする。僕はものへの愛着も感じるし、ものが無いことへの味気なさも覚える。

だから一先ずは、足るを知るという生き方がしたい。新しいバーナーは本当に必要なのだろうか、ランタンはまだまだ使えるのではないか。もう一度深く考えるのだ。
僕はキャンプ道具をいじっている時に、だいたいこんな考えが浮かんでくる。キャンプや野宿という不便さの中にも、なにかヒントが隠されているような気がする。

僕は弱い人間なので、このような震災が起こった時だけ、物欲にまみれた自分を戒める。震災の被害に合われた方々、お見舞い申し上げます。幸い知人は皆無事でした。今年は阿蘇も良いなと考えていましたが、今は僕が出来ることを出来る範囲でしたいと思っています。九州の方の心がこれ以上傷つかず、早く穏やかになることを祈っています。

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