旅とはなにかをGROMの父子がわかってらっしゃる件

「旅」という言葉を使うときはいつも、ある種の気恥ずかしさを覚えます。

こんなサイトを掲げておいて今更かよと言われたら、返す言葉も見つからないのですが、僕のしていることを旅などと呼ぶのは、おこがましいんじゃないかという気持ちがあるのですね。昨今のバイク雑誌などを見ても、旅という言葉がより頻繁に使われるようになった気がします。そう、昔よりも。旅と旅行の違いとは、何なのでしょう。旅という言葉の範囲が以前より広がって、広義での旅の中に旅行もクロスオーバーしてきました。旅と旅行は今や、ある意味同義であって明確な線引きはないのかもしれません。

今一度、旅という言葉を考えてみたのですが(柄にもなくですね)、今居る場所に戻らないことを前提としたものが旅であるのなら、僕のは旅などではありません。
ホーム・スイート・ホーム。思えば遠くへ来たもんだ、そして帰って行くもんだ。いつも家には帰ります。待っている家族もおりますから。放浪の旅とかあてのないの旅とか、憧れはしますけどそこまでの甲斐性はありません。そして、そこまでの甲斐性がないことも、一向に構わないことだと思っています。「そんなの旅なんて呼んでほしくないね」という流浪の旅人が仰るなら、僕のサイトも「旅行するバイク。」への改名が必要になりますね。それはそれで別の気恥ずかしさが生まれますが。

旅というものに冒険や、重大な危険が伴わなければならないのなら、僕のは旅などではありません。
ちょっと山に分け入って釣り竿を垂らす時などは、熊が出やしないかと少しビクビクしますし、明かりひとつない独りぼっちのキャンプ場に寝るときも、なにかに襲われたらどうしようと考えなくもありません。しかし、そのようなささやかな恐怖心も、むしろ程よいスパイスとなって彩りを与えてくれる存在です。これこそ旅などと呼ばれては憤懣やるかたないと仰る達人の向きには、素直に改めましょう。

 

旅という言葉を辞書で引くと「住んでいるところを離れてよその土地を訪ねること」とあります。ずいぶんと広い。もう少し深く調べていくと「旅(訓読み)」は大和言葉、「旅行(音読み)」は漢語であることがわかります。そして日本の言葉である「旅」には過程である道程を重視し、広大な土地をおさめる中国の「旅行」には目的地を重視するという違いがあります。薄ぼんやりと、その意味するところが見えてきました。

では僕の日がなバイクでフラフラするという行動は、その過程を楽しんでいるのか目的地へ辿り着くことに重きを置いてるのか考えてみれば、答えは明白です。場合によっては目的地に着かない、なんてことも珍しくはないですし、そもそも目的地すら無いこともありますから、僕に限らずライダーのほとんどが「旅をしている」と言って良いのかもしれません。
さらに言えば、旅とは距離や目的地によるものではなく、心の持ちようなのかもしれません。近所のタバコ屋にバイクを走らせた時、その澄み渡る空と流れていく風景に、いつもと違う特別な何かを感じる心持ちがあったら、それもひとつの旅だと言うのは浅はかでしょうか。

 

先日、北海道ツーリングに行ったのですが、そこでとても印象に残る父子ライダーが居ました。バイクはホンダのGROMという125ccのオートバイ。決して大きいとは言えないサイズのGROMに、でっぷりコロコロした太めのお父さんとおそらく息子さんでしょう、中学生くらいのわりと背の高い男の子がタンデムで北海道を走っていたのです。ナンバーは確か群馬ナンバーでしたから、なかなかの過酷さが想像できました。

この父子ライダーを、なぜか事あるごとに各所で見かけていたんですね。道端の休憩所に入ったときは、コロコロのお父さんが地べたに大の字になってヘバってる姿を見ました。息子さんがそんなお父さんを、パタパタとタオルで扇いでいたのです。またある場所では、豪雨の中レインスーツを着て走ってる二人を見ています。実は礼文島へのフェリーの中でも、息子さんの姿を見ました。小さなGROMにパンパンの荷物と、パンパンの人間を積んで何百キロも走っているのです。時にゼーゼーと息を切らしながら。

その姿は失礼ですけど、やはりどこか可笑しみがあって、だけどそれ以上に強烈な旅感を感じたのでした。「ああ、これって旅だよなあ」って猛烈に思ったのです。つまり何が言いたいのかというと、いや特に何も。ただそう思ったという話ですね。

 

 

 

1件のコメント

  1. 今晩は、RYOです。
    報告遅くなり、恐縮です。
    何とか元気に帰り着きました。
    トラブルも処々あり、本当に「何とか」でした。
    整備は大事ですね。
    最終日、苫小牧東港へ向かう途中、Rタイヤから白いものが・・・カーカスです。ミシュラン コマンダーⅡは、ロングライフと言われますが、25,000キロ以上は使いすぎですね。(戻ったら、交換のつもりでしたが、試される大地を甘く見ていました)
    それからは、生きた心地ではありません。
    新潟の2りんかんで、交換してもらい、暗く寒い関越道を走り切りました。
    本当に試されましたね。
    新潟市内のディーラー2店に問い合わせたところ「FXDL2002」の在庫は古いのでない。とのこと。(そうなんです、私も同じ年式のダイナです。因みに、今回の北海道で90,000キロ達成!エンジは、まだ一度も開けてません)
    2りんかんは、まさに地獄に仏でした。
    そして、あらためて「家が一番」
    では、また。

    • RYOさま

      お帰りなさい!コメントありがとうございます。
      とにもかくにも、無事にお戻りになられたとの事で良かったです。
      そうでしたか、同年式のダイナとは。ぎゅんと距離が縮まりました(笑)。
      確かにもう15年選手ですもんね、デューラーにとっては「古い」のかしら。
      実は僕も新潟からの帰り道、ちょっとしたマイナートラブルはありました。
      走れない程ではなかったのでそのまま帰りましたが、嫌な心地ですよねトラブルは。わかります。

      90,000キロに渡ってエンジン元気とは、素晴らしいローライダー!
      とりあえず、バイク共々お疲れさまでした。

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