シーズンオフに入ったのを機に、DTのキャブをオーバーホールする。
なんとなく回転の落ちが悪いことがあって、キャブが汚いせいかもしれないなと思ってはいたが、思っているだけで億劫であることもたしかだ。寒くてオートバイをイジろうという気にならない。今さらながら読み始めた「課長 島耕作」もまだ道半ばで、このまま友達として付き合っていけるものなのか計りかねていた。でも、島の会社員人生はこの先も長い。いったん本をとじてまずはキャブと向き合うべきだろう。
僕は重い腰を上げてガレージに降りた。
アラジンのストーブに火をつけて、AMラジオのスイッチを入れる。久米宏の声を聞きながら作業開始。DTをメンテナンススタンドにかけて、キャブの辺りをしげしげと眺める。
WRに比べたらスカスカなので作業は楽そう。
それにしても汚いなあ。泥汚れとガソリンとスラッジと。38年の間に何度かはバラされたのだろうか。そもそもこのキャブは、38年間付いていたのだろうか。
ホース類を外してインシュレーターのバンドを緩め、傷めないよう慎重に、かつぐりぐりと力任せに引っぱり出す。はい出た。シリンダー側にはかるくティッシュ詰めて養生。
アクセルワイヤーを外すとスロットルバルブも抜けて、キャブがフリーになる。
スロットルバルブにはニードルが。クリップ段数3段目、まあそんなもんか。
ジェット類を外してフロート室を開ける。少し固着。中の状態は多少汚れてはいるけど悪くない。
フロートを抜いてメインジェット、パイロットジェットを外す。バルブシート、フロートバルブの段付きチェック。
磨耗もなく大丈夫そう。
外せるもの全部外したら、クリーナーじゃぶかけ。
YAMALUBE泡タイプ。
穴という穴に吹きまくる。汚れがどんどん出る。気持ちいいね。
しばらく乾燥させたらエアで水分飛ばして、元どおり組み付ける。
綺麗になった。
すっかり日が暮れるのが早い。この時期の夕方5時ともなれば、夜の帳は下りている。
DTを表に出してコックをオンにし、アクセルを2~3回あおる。チョークを引いてキーをオンにし、キックを踏む。もう一度。
バイン!と勢いよくエンジンがかかり、しばらく暖気しながら何度かブリッピングする。DTはフルノーマルなんだけど、5時とはいえ暗くなった住宅街では気がひけるほど喧しい。バイン、バイン、バイーン!と少しだけふかしてエンジンを切る。
たぶん、良いんじゃないかな。