仙石原のすすきがそろそろ良い頃だろうと、久しぶりに箱根に向かう。
用賀から東名高速に乗り込むと、身体を打つ風はすっかり晩秋のそれで、早々に港北PAに逃げ込みインナーダウンとインナーグローブをつける。朝食をとってなかったなと思い、「クロワッサンが焼き立てですよ」というパン屋さんの並びを眺める。バターの焼ける香ばしい匂い。旨そうだと思ってトレーとトングを手に取る。さて、いくつ買おうか。今日の昼飯を思えば1個で充分だ。ただ、大の大人がクロワッサンを1個だけトレーにのせるのもあまり格好のいい話ではない。それでソーセージロールものせる。はい、これで。

コーヒーとパンをかじりながら今日のルートを考える。「とりあえず、小田厚に乗るか」今日の天気では頂上の見晴らしは望めないだろうけど、久しぶりに大観山に上ってみることにした。

ターンパイクに滑り込んで秋の気配をと紅葉を探すが、空が一番秋っぽい。予想通り、大観山は厚い雲に覆われていて富士山は見えない。

大観山を下りて芦ノ湖。次第に晴れてきて富士山が顔を出す。それで満足してまたアクセルを開ける。芦ノ湖スカイラインに乗って芦ノ湖を時計回りにぐるり。

湖尻峠で下りて、県道75号から仙石原へ。

観光客でごった返してたので、少し離れたところまで進んで道路脇に止める。こんなに人が来るところだったかなあ。でも良いタイミングで見られて満足。さて、次行こう。

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今日のもうひとつの目的は「箱根かれー 心」のスペシャルカレーである。むしろこちらが本来の目的と言っても差し支えない。
このところ僕の心には狂おしくカツカレーがいる。先日、思いが高じて志村三丁目に評判の店があるというのでセローで向かってみたら、ちょうど店主が暖簾を下げるところだった。「ご飯が無くなったからね」そう言って店主は申し訳なさそうに扉を閉めた。それ以来僕の心のカツ＆カレーは消えないままなのである。ちょっと調べてみたら、箱根湯本駅近くに良さそうなカレー屋がある。店名は「ココロ」。迷う理由はどこにもない。

箱根裏街道を抜けて箱根湯本へ。駅周辺も観光客でいっぱい。人の波をぬって細い道をゆっくり進みながら、川のたもとにようやく店を見つける。オートバイや車で行くには、停める場所がなくてちょっと難儀する。

ここまで来て引き下がれるわけもなく、半ば強引に橋沿いにバイクを停めて、いざ行かん。

店内はほぼ満席。家族連れがひと組待っていたんだけど、おひとりさまの僕は1席だけあるカウンターに先に通される。

水を口に運びながらメニューを見る。予習はできている。
いつもなら、初めての店ではベーシックメニューを選ぶところだけど、今日の心はカツ＆カレーなのである。「心スペシャルをお願いします。」

「カウンターさんスペシャルワンでーす！」

威勢の良い声が店内に飛ぶ。

「先にライスになりまーす」

カツライスが運ばれてくる。これだけでも充分食べ応えがありそう。

「お待たせしました、カレーです。本当に熱いので気をつけて下さいね」

スキレットにグツグツと煮立ったカレーが、ドンと目の前に置かれる。具はゴロゴロの野菜と存在感のある角煮、半熟の卵。もうこれ絶対旨いやつじゃん！

トロッとした半熟卵を崩す。ああー。

角煮はスプーンで切れる柔らかさ。あーもう。

 

ガツガツと勢い込んでカレーを食べる幸せ。
辛さは控えめ。スパイスの追加も可能。僕にはちょっとボリュームがあり過ぎると思ったけれど、結局全部平らげてしまった。著名人も訪れる有名店なのだろうけど、ちっとも鼻にかけるところはなくて、終始お客さんに目を配っては丁寧に言葉をかけていた。そういう店は食事の旨さも倍増する。

抱えていたカツカレー問題は箱根の名店で幕を閉じたのである。心のカレーは心にも胃袋にも刺さるカレーであった。帰りは腹ごなしに下道で帰った。