ハーレーシーンにおける著名なカメラマンMichael Lictherと2日間を共にした話 〜Day1

マイケルはとにかくタフだった。

御年63歳になる彼は、止まることがなかった。一流であり続けるためには、心身共にタフであることが必要なのだと彼を見て思った。そして繊細であること。人に対して優しいこと。彼を一流たらしめる理由を、この2日間で少しだけ垣間見たような気がする。ハーレーシーンではトップレベルのフォトグラファー、マイケル・リクターの撮影に、ドライバー兼サポートライダー兼、助手の助手兼、ただの見学者として同行した。

マイケルがどのくらいのビッグネームかというと、先のホットロッドカスタムショーで撮った写真が本国HARLEY-DAVIDSON社に買われ、同社のインスタにすぐアップされるほどに有名だ。ロッドショーが終わってからの1週間余り、彼と息子のショーンは日本のビルダーを訪ねて各地を巡っていた。日本での最後の予定は、千葉の「SURESHOT」での2日間にわたる撮影だった。

数日前、奥様に「ラストの2日間マイケルの運転手がいないんだけど」と頼まれて、僕でお役に立てるならと承諾した。来日後ずっとサポートを続けていた松本カメラマンは、次の仕事のために九州に戻らなくてはならなかった。

この2日間では車の運転だけでなく、走りの写真を撮るためにマイケルとのタンデムライドも務めた。これなんかは貴重な体験をさせてもらったと、むしろ感謝している。
借り物のEVOダイナの後ろにマイケルを乗せて、彼の指示のもと右に行ったり左に行ったり撮影を手助けするのは楽しかった。マイケルが少しでも撮りやすいように、前方にも後方にも意識を集中する。「ベリースムースに頼むよ」と出発前に言われていたのでアクセルの開け閉めにも気を使った。

撮影初日、関西での撮影を終えて新幹線で東京駅に着く2人を、レンタカーで迎えに行くことから始まった。駅から出てきた2人の荷物は信じられないほど大量で、大型のスーツケース2つ、ノースフェイスの大型ボストン、大型カメラバッグ、巨大足袋、この上リュックを2つほど抱えて出てきた。2人ぽっちでどうやって運んでるんだ。挨拶もそこそこに大量の荷物と2人を車に押し込んで、首都高から京葉道路に乗り込み、千葉県八街市のSURESHOTに向かった。

SURESHOTではお客さんがすでに15台ほど集まっていた。ほとんどの車両がこの店でビルドしたものだ。今日はいったい何するの?という面持ちで、皆出発を待っていた。

今回が初来日であった息子のショーンは、この10日間ずっと撮影のサポートをしており、観光らしい観光は少しもしていなかった。今日遊ばないと明日はないと焦りを覚えたショーンは、自分だけでもどうしても渋谷か原宿に行きたいと訴えた(笑)。せっかく日本に来たのにもう撮影などしてられるかと。30歳の好奇心旺盛な男だ、気持ちはわかる。でも千葉まで乗せて来たのに早く言えよ(笑)。

結局、彼の熱き要望は受け入れられて、お店の方に最寄り駅まで送迎してもらい、彼は電車に乗ってHARAJUKUに旅立って行った。have fun !

さてわれわれ撮影班は、ツーリングシーンからスタートした。
走りを1人ずつ撮るために、出発前にマイケルが動きを確認する。代表の相川さんを先頭に、僕とマイケルのダイナが続き、以降10数台の長い隊列で九十九里浜を目指した。

走りながらマイケルがハンドサインで指示を出し、皆近づいたり離れたり、時にスピードを上げたり後方に下がったりしながらフレームに収まる。僕は一定の速度を保つことに集中した。九十九里有料道路に乗ってからがいよいよ本番。バックミラー越しに見えるマイケルの撮影はすでに確立されたものだった。プロの仕事だなと思った。

九十九里有料道路を終点まで行って、大東海水浴場に乗り入れてバイクを停める。砂浜の自由な雰囲気の中で、お喋りしながらのユルい撮影がスタートした。少し天気は曇っていたけれど、皆話しながら、時にマイケルに撮られたりしながら、ゆるゆると時は流れていった。

パッと見ノーマルの ’79 FXS LOW RIDER。実はタンクからフェンダーからストラットから全てサイズを詰めてあってひと回りコンパクトになっている。派手さはないけど渋すぎる玄人カスタム。オーナーにも似合っててカッコいい。

SURESHOT 代表、相川さん。
このバイクの生い立ちに、後日僕は感動する。

陽が傾いてきたのでそこから折り返して、帰りも同じように撮影した。光が届かなくなるほど暗くなると、マイケルのカメラは動かなくなった。

終わりかな、と思ったけど店に戻ってからも彼の撮影は続いた。ストロボのアームを片手で支持しながらシャッターを切った。ビルダー相川拓也の作業シーンを撮った。客が帰るとなると外に飛び出してそのシーンを撮った。少しも止まることなく貪欲にシャッターを切り続けた。

「DONE !」

全ての撮影が終わって、彼をホテルに送った。チェックインを済ませて部屋に荷物を運び込み、少しも腰掛けることなくそのまま食事に出た。

居酒屋でマイケルと相川さんと奥様と僕でビールを飲みながら(僕は車なのでウーロン茶)、たくさん話をした。日本のこと、アメリカのこと、トランプ大統領のこと(笑)。

相川さんとは今回のHRCSで初めてお会いしたんだけど、大ファンになってしまった。あんなスペシャルなバイクを作り、アワードも沢山とってるのにこれっぽっちも偉ぶる素振りがない。有名になれば少し鼻が高くなったりもする。そういうところが全然なくて、まるっきりの褒め言葉なんだけど、オートバイという乗り物に真摯に向き合う修理屋であり、整備士であり、何よりバイク好きの気の良いお兄ちゃんなのだ。

『敷居の高いカスタムショップじゃなくて、腕の良いバイク屋を目指している』なんて泣かせるセリフ。近くにあったらこれほど頼りになるバイク屋もない。”実るほど頭を垂れる稲穂かな” 身に染みます。だけど一方で、バイクビルドに対する熱い想いもしっかりと伝わってきた。

 

都会を満喫したショーンが興奮気味に帰ってきて、その話をゲラゲラ笑いながら聞いて酒席はお開きとなった。僕と奥様はいったん車で東京へ帰り、また明朝9時に彼らを迎えに千葉まで来る。明日はSURESHOTの2台のカスタムバイクを千葉の港で撮影する。マイケルとショーンは撮影後、成田17:30発の便でコロラドへ帰っていく。

 

 

 

 

1件のコメント

  1. このローライダー、めっちゃカッコイイ!!
    ショップのHPでマジマジみると、更にカッコイイ!!!

    オリジナルをうまく残していて、これならやってみたいと思う一台ですねぇ。
    カスタムのいいお手本になります♪

    • okuちゃん

      コメントありがとうございます。
      ひとまわりコンパクトにしときましたって感じのローライダーでした。見た目派手さはないんですけど、地味に苦労してるみたいですよ。純正度が高いとちょっとイジるのも勇気がいりますね。

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