ハーレーシーンにおける著名なカメラマンMichael Lictherと2日間を共にした話 〜Day2

2日目の撮影は千葉の港で。
9時過ぎに2人をホテルまで迎えに行って、バイクを積んだ相川さんのトラックと合流。日曜日で人気のない港にカスタムバイクを下ろす。

車両は昨日相川さんが先頭で走った’74 XLH1000 Sportsterと、先日のHRCSに出展したラバーマウントのEVO Sportster。

シンプルなシチュエーションが良いということで、オレンジ壁の前に黒の ’74 Iron、ブロック壁の前にはシルバーのラバマンスポーツスターを置く。

マイケルの指示のもと車両の位置を微調整。静かにシャッター音が鳴り始める。全景は長いレンズで遠くから狙うので、三脚を使い2秒のタイマーで切る。

近影は50mmレンズ。すごく集中してるのがわかる。ちょっとピリピリしてる。背筋が伸びる緊張感。

船の着岸にも敏感になる2人(笑)

レフ板やストロボは使わなかった。奥様がマイケルの背後についてアシスト。ボディ3台を使いまわしながら小さく指示を出す。
彼が次に何をしたいのか、何を考えてるのか、奥様は一歩先を読んで行動する。どんな世界でも同じかもしれないけど、イメージできるかどうかって大事だよね。

今年のロッドショーに出されたトラッカースタイルのEVOスポーツ。
テールの意匠が秀逸。ダウンドラフトのツインインジェクションが、スーパーチャージャーのようなド迫力。ラバーマウントのスポーツは、元来スイングアームのピボットがエンジン部にラバーマウントされていて、高速域になるとどうしても「ヨレる」。それを相川さんはフレーム側に移設することで剛性を高めた。言われなきゃわからない走るためのカスタム。

もう一台の ’74 Ironは、昨日相川さんが乗るのを見て、実は少し気になっていた。

「あ、このアイアン右シフトなんだ」

年代的にそうなのかと思っていたんだけど、よくよく見るとなんかおかしい。右シフト右ブレーキなのである。右に操作系が集中していて、つまり左側にはステップしかない。

 

「相川さん、これって?」
「トラックレーサーには良くあるんですけどね。左回りしかしないから」
「あー、なるほど」
「でもね、これ実は、オーナーが片足義足の方で」
「え?」
「この方が店に来て、最初に言ったことが『全部右にしてくれないか?』って」
「ほおぉ」
「どこの店でも断られたらしいんですけど。でもやっぱね、こういうオーダーってやりがいあるじゃないですか」
「ふんふん」
「今までバイク作って人のためとか世の中のためになったって、あんまり無かったんですよね。どっちかと言えば排気ガス出したり、うるさかったりするでしょ」
「ふんふん」
「これ乗るにはそれ用の免許も取り直さなきゃいけないんだけど、オーナーもモチベーション高い方で、すぐ取りに行きましてね」
「ふおおお」
「ずっと良い状態で、もう8年乗ってくれてるんです」
「めちゃめちゃドラマチックじゃないですかー!」

こんなエピソードもあえて語らないところも相川さんらしい。

マイケルの撮影はわりと長いことで有名らしく、つまりは時間の許す限り、ひいては時間を超えても撮り続ける。これもまたプロのこだわりなんだと思うけど、HOG KILLERSのアキさんが「とにかく長いんだよ〜」と嘆いていたのを思い出す。

だけど、マイケル・リクターに「はい終わり」と言える人など誰もおらず、そこへきて救世主となったのが息子のショーンだ(笑)。

彼はここ数年で父親のサポートをするようになったが、息子の彼だけが「マイケル、そろそろ終わろう」と言える。たまに痴話げんかになってるけど良いコンビなのだ。

飛行機の時間を考えると、13:00には撮影を終えて空港に向かわなければならない。相川さんとしては少し早めに終わって、帰る前に丸亀製麺に連れて行きたい(笑)。しかしマイケルに終わる素振りはない。バイクを移動して海をバックに撮り始める。

「マイケル、マイケルあと6分だ」

ショーンが言う。全く意に介さないマイケルは構わずシャッターを切りまくる。今度はバイクの向きを変えてくれと指示を出す。ショーンが少しイラっとする(笑)。でもやはりBOSSはマイケルだ。彼の指示通りバイクを移動する。

そんなやりとりをしながら、全ての撮影が終わったのが13:20。
すでに昼食をとる時間は残されていなかった。薄々わかってたことなので僕たちは苦笑い。10分で片付けてバイクを積んで、ここで相川さんとは別れる。マイケルとショーンとハグをして、僕は相川さんとがっちり握手して解散した。また一人、カッコいい男と出会えた。

それからは車をすっ飛ばして一路、成田国際空港へ。
予定時刻の14:30に到着、無事間にあった。

大量の荷物をカートに積んで、2人とハグ。コロラドへ遊びに来いと言われるが、いつか行けたら良いな。2人が出国ロビーへと消えていく。見えなくなるまで手を振って大団円。また来年会いましょう。僕たちは無事に送り届けた安堵と、少しの名残惜しさに浸りながら東関東自動車道に乗り、東京への帰路へ向かった。

高速を10kmほど走っただろうか。奥様の携帯がピロピロ鳴った。相手はマイケルだった。

 

「I left a wallet on your car !」(君たちの車に財布を置き忘れた!)

 

 

 

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