男の夢。男のロマン。

6時にかけた目覚ましに気づかず。目を覚ましたら6時半。
着替えて顔を洗い、家事を少し済ませ、ガレージを開けてワイドグライドを出す。昨夜はどこへ行くか考えすぎて夜更かしした。こうして起きられない朝を迎えるパターン。路面が濡れている。けど雨の気配はない。今日は暑くなりそうだと思いながら、大通りまでバイクを押していく。

アクセルを2〜3回あおり、キャブにガスを送ってエンジンをかける。出発が8時を過ぎてしまったので、手っ取り早く首都高に乗る。今日は走る気満々なのである。
首都高から中央道へ。予想通り少し混雑してる。一気に夏の様相。背中に太陽の熱がじりじりと照りつける。

笹子トンネルを抜け、勝沼を超えて、普段はあまり立ち寄らない釈迦堂PAで休憩。腹が減っていることに気づき食堂へ。

「昔ながらの中華そば」を見つけて朝ラーをすする。

諏訪南ICで高速下車。久しぶりにビーナスラインへ向かう。どこへ行こうかあれこれ考えて、少し遠くまで走ってみることにした。

信州の夏はでかくて清々しくて、やっぱり選んで正解だったなと道中思う。

ローソンでコーヒーを飲みながらルート選定。県道192に乗り、とりあえずビーナスラインを下から白樺湖まで上がっていくか。

緑が濃いなあ。空も広い。

白樺湖をぐるっと一周してから諏訪湖方面へ。

本当は逆へ向かいたいんだけど、ここまで来たらもう少し高原を味わってから。美ヶ原までは次回の楽しみに取っておく。

霧ヶ峰富士見台にとまってブルーベリーソフト。色は毒々しいがさっぱりして旨い。クリームが良かったけどちょっとシャーベット。

ぼんやりと丘を眺めながら、今年はなんだかわからんうちに時間が過ぎていくなと思う。こうしてゆっくり景色を眺める余裕もなかった。

コーンの紙をくしゃっと潰してバイクに戻る。さて、そろそろ行くか。満足して来た道を戻る。オレにはまだ行くべき場所があるのだ。

蓼科スカイラインをぐねぐねやって佐久へ。河川パトロールを交えながら、中部横断自動車道、佐久小諸JCTから上信越自動車道に乗る。軽井沢を抜け、一気に群馬県は藤岡市までワープ。信州から上州へ。

藤岡ICで降りてナビの指し示す店へ向かう。

宝来軒

この渋すぎる佇まい。まるで鉄工所か町工場のようである。壁から突き出た煙突には真っ黒のススが溜まり、ここが焼肉屋だと知らしめる。

到着は16時30分。途中道を間違えたり、ゆっくり来たけどそれでも早過ぎた。もう少しビーナスラインを楽しめたのだが、はやる気持ちが勝った。本来の目的地はここであり、開店が夕方の5時からなので長野まで足を伸ばした次第。

店前にバイクを停めて入口付近をフラフラする。中では人の気配がする。開店準備に追われているのだろう。待つよ。待つとも。あのカウンター席で一人焼肉が楽しめるのだと思えば、30分くらい待つのは造作もないことだ。

「うちに来たの?」

見つけてはくれまいか、という淡い期待あってのことだけど、案の定店主が出てきて声をかけてくれた時、僕は小さくガッツポーズした。開店時間の20分前だった。

「はい、そうです。ちょっと早く着いちゃって」
「予約してる?」

一瞬心にどす黒い雲がかかる。やっぱり予約しておくべきだったか。

「いえ・・・してないです」
「おひとり様?」
「はい」
「じゃあ、ちょっと早いけど中で待って。TVでも見ながらさ」
「あーすいません!ありがとうございます!」
「じゃあ、カウンターのこの席でいいかな」
「結構予約って、入ってます?」
「この席以外はもういっぱいだよ」

く〜〜〜。しみじみとツイている。やはり早く着くといいことがある。ここまで来て食えなかったらオレは自分をイヤというほどしばき倒しただろう。次回は必ず予約すること。

店内はなんとも雰囲気がある。お目当だったおひとり用カウンターに座れて願ったり叶ったり。こんな焼肉スタイル今まで味わったことがない。15分前なのに次々とお客さんが集まりだす。予約のなかった4人が来たけど、当然ながらお引き取り。

まだ開店時間前だけど、頼んでいいよとマスターが言ってくれてメニューに目を落とす。このマスターが昔ちょっと悪かったよねって感じの、すごくカッコいいおじさまなのであった。

牛肉ももちろんあるが、宝来軒の真骨頂は豚である。知らんけど。

井之頭五郎に倣って、豚流しとする。
またぞろ、持ち出してなんだけど、ここは孤独のグルメで登場した店。もっとも五郎は豚だけでなく牛の上カルビも頼むのだが、「思わず、牛も頼んでしまった」と独り言ちる。お上品な焼肉店ではない。安いが新鮮で旨い肉を、燃えたぎるロースターで炙り、白米にバウンドさせて大ジョッキで流し込む。これが正しいあり方の店である。

悩む。どのくらい頼んでいいかわからんのだが、とりあえず目星をつけてマスターに声をかける。

「えーと、豚のカルビとロース、それからタン。塩ホルモンとご飯の並、あと烏龍茶をください」
「カルビとロースとタン、塩ホルモンね」
「量ってどおです?この程度で?」
「あー、もう充分じゃない。足りなかったらまたあとで」
「はい、じゃあそれで」

まだ食えたら牛の上カルビを頼もう。
ロースターに火が入り目の前の鉄板が熱を持つ。オレの熱も嫌が応にも上がってくる。5分ほどしてマスターが皿を運んでくる。

「はい、豚タンね。これはレモン」

こ、これは。見るからに鮮度が良いのがわかる。

早速焼く。ロースターがジューっと良い音を鳴らす。

「はい、ロースとカルビ」
「ご飯と烏龍茶ね」
「これは塩ホルモン」

次々と出てくる。戦いの火蓋は切って落とされた。

ひたすら焼いては食う。焼いては食う。もうもうと上がる煙に目をしばしばさせながら、なりふり構わず口に運ぶ。

おひとり様卓上パーティーやないか!

豚だからよく焼いて、と思ってわりとしっかり火を通したが、焼きすぎないほうが格段に旨いことを中盤で知る。さすがにレアとまではいわないが、焼きすぎたら台無しなのであった。

良き頃にコチュジャンとニンニク投下。

ダイブして

バウーンド。

肉4皿とご飯食って腹一杯。上カルビまでは届かずも、大満足なのであった。
こういう店はサクッと食ってパッと立つ。隙間に紛れ込ませてくれたことに感謝しつつお会計。若いお兄ちゃんがレジを打つ。

「ありがとうございます。2,060円です」
「えっ?」

思わず聞き直してしまう安さ。豚肉だけとはいえ安すぎだ。代金を払ってマスターに礼を言い、店を出る。

願わくば、やはり肉を食らいながら大ジョッキを煽りたいのであった。そうだ、今度はどこかに宿を取って・・・ぶつぶつ。

開店から30分しか経ってないのに「本日満席」の看板。

そこからは関越道に乗り帰路へ。

高速も多かったけど、久しぶりの500km超え。よく走った。
この日、関東の長い梅雨がようやく明けた。

 

 

 

 

 

1件のコメント

  1. すごいすごい!ビーナスラインに行ったついでに宝来軒に行かれたと思いましたが、そもそも宝来軒に行くための寄り道だったんですね。しかし、さすがの食レポですね!もうその店の良さと美味しさがそのまま伝わってきます。もうnovotel改めて井之頭六郎に改名したほうがよさそうです(笑)。今度みんなでビーナスラインから宝来軒にお泊りツーリング行きましょう。牛カルビと大ジョッキのお酒までたどり着けるように:-)

    • nmindさま

      ビーナスラインがついでです(笑)
      六郎て。
      まだまだ自粛もしなきゃいけないんでしょうけど、予防しながらも少しは人間らしく生きないとですね。肉食ってんな〜〜生きてんな〜〜て感じでした。つまみ系も充実してるようで、皆でワイワイ飲み食いもきっと楽しいに違いありません!コロナが落ち着いたら是非。コメントありがとうございまーす。

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