ありがとう、僕のサラブレット

WR250Fを手放した。バイク寿命の永い僕としては珍しい出来事なのでここに。
縁あってこれから林道を走りたいという方と出会い、希望する額で買ってくれて、今日その人のもとへ嫁いだ。最近ではモトクロスコースに持ち出して一日遊ぶ程度で、出番は随分減っていた。所有して10数年、永い間オフロードの楽しさを教えてくれたバイクだった。

腐っても鯛の言葉通り、レーサーとは速く走るために生まれてきた純血種である。トレール車でどんなに頑張ってみても道産子であることは変わらない。レーサーだから偉いということではなくて、そういう血のもとに生まれた車。僕は今、ポニーともいえるセロー225をとても愛おしく思うけど、一度サラブレットに乗れたことは幸運だったと思う。

15年前の僕たちは、出勤前に多摩川河川敷に通うほどオフロードバイクに夢中だった。当時僕はKLX300に乗っていて、たまに友人のKTMやCRFに乗らせてもらっては、一枚も二枚も上の性能にため息をついた。初めはその違いがわかる自分に満足したが、次第に「ずるいじゃんこれ」と思った。ギャップのお釣りを去なして体力を削られるのが常だったKLXに対し、それらのレーサーはただ開けとけばマシンが勝手に走ってくれた。

結局僕は仲間のご好意で、このWRを手に入れる。時代もあってレーサーレプリカには何台か乗ってきたが、レプリカとつかないレーサーは初めてで、とにかく嬉しかったのを覚えている。「オレ、バイク、レーサー!」って大声で言って回りたかった。

それから10数年、林道からツーリングからオフロードコースまで、”ちょっとアゲたい時”の相棒はWRだった。いつでもしょぼくれた僕の心に喝を入れる刺激的なマシン。懐が深くて、250ccとは思えないパワー感が小気味よかった。

ありがとう、僕のレーサーよ。
WRの名前を出すときはちょっと誇らしかったよ。少しばかりおセンチな気分にもなるけれど、何かを手に入れたければ何かを手放すべきである。さあ次のプロジェクトへ進もう。また良縁にでも恵まれればだけどね。

 

 

 

 

カテゴリー: WR

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。