毘沙門天浜と三海荘の海鮮丼

三浦半島 城ヶ島はその昔、徹夜仕事のあと寝ずによく走りにいった場所だ。
「あの頃は」なんて言いたくないけれど、今より気力も体力もあったんだろうな。それをあまり辛いとも思わなかった。

環八から第三京浜に滑り込んで、ループの先の本線へ合流する時、頭の中では決まってレッチリの「Fortune Faded」が流れた。脳内でイントロのドラムが高鳴るのに合わせて、アクセルをワイドオープンする。徹夜明けのアドレナリンがドバドバ出て、ある種のカタルシスだった。あの時のワイドグライドも第三京浜もレッチリも、凹んだところに出っぱったものをはめ込むように、僕の中では全て均衡のとれた世界だった。

ふとそんなことを思い出して、日々の煩わしさに少し振り回されていたこともあり、三浦半島に行くことにした。海か山かと問われたら、僕はかなりの確率で海を選ぶ。少し鬱々とした心持ちでいる時なら尚更のこと。

混雑した青山通りを走り、のろのろと駒沢を抜けて環八へ。ようやく第三京浜に乗ってループの先に飛び込んだけどレッチリは流れなかった。でも天気は良くて爽快。
横浜新道から横横道路。横須賀PAでひと休みしてから衣笠ICで降りる。三浦縦貫道路を南下する。

三浦半島の穴場キャンプ地といわれる「白浜毘沙門天」という浜があると知って向かってみる。

浜へは知らなければ到底わからない細道を抜けて、しまいには泥濘んだガレ場を超えて砂浜に出る。

車重のあるハーレーでは少し気を揉むようなシチュエーション。どうにかバイクを停めて浜まで歩いてみる。

土曜日ということもあってか浜はかなり混雑してる。あまり穴場とも言えないのかしら。

とはいえ目の前は美しい海である。僕の家の前にも海があると良かった。

ありきたりだけどエネルギーチャージ。しばしボケーっとする。

 

去る。

腹も減ってきたので城ヶ島に渡る。島は人でいっぱい。ああもうコロナなんて関係ない感じ。

いつもの「しぶき亭」もごった返してて門前払い。

さて、どこで飯食うか。

以前奥様と行った三海荘に行ってみる。

渋めのファサード。媚びないツラ構え。

タイミングよく一席空いていて座れる。

大将は六十半ばといった感じで、曰くありげな顔というのだろうか、雰囲気はある。あまり愛想はない。が、不親切というわけではない。知らないふりをしながらその実、気配りのアンテナを張り巡らせてるタイプである。

手を洗ってからメニューに目を落とす。忙しそうな女将さんのタイミングを見計らって声をかけ、海鮮丼をお願いする。

「はい海鮮丼2番さーん」

頭上のテレビを見るともなく見ながら到着を待つ。

15分ほど待って着丼。なんか凄いのきた。

アルミカップが乗ってくるタイプは初めてである。でもそこには「混ざらないように」というお母さんが作ってくれた弁当と同じ優しさが見て取れる。これだから海鮮丼は面白いよなあ。

サザエ丸ごと乗ってくるとかある?

十数種類のネタをひとつずつ楽しみながら、掘り当てた酢飯を頬張り、潮の香りのするあら汁を喉に流し込む。うまい。これなんだよ、僕が食べたかったのは。

「ごちそうさま。美味しかったです」と言って店を出る。
「ありがとうございました。またお願いします」と大将が応える。

またお願いする。
純粋なひと言だなと思う。お願いされました、また来ます。

気分良くなって鼻歌交じりに帰った。

 

 

 

 

 

1件のコメント

  1. 三浦半島、去年冬が終わる頃にツーリングに出かけて思ってもなかった所で白バイにサイン会をやったことがあってそれがトラウマでその後は全く行ってなかったですね。家からだと三浦半島・城ヶ島辺りが一番違いですけどね。novotelさんの記事を読んだら久しぶりに海鮮丼かマグロ丼を食べに三浦半島へ行きたくなりました。

    しかし、海鮮丼にサザエのつぼ焼きが乗ってるのは初めてみました(笑)。ワイルドですね!

    • nmindさま

      そうだったんですね。確かにこの日も対向車のGSオジサマが、目の前で覆面パトカーに停められてました。すんごい辺鄙なとこでしかも覆面ですからビビりました。トラウマ、わかります。。
      ねー。サザエねー。自分史上最高に食いづらい海鮮丼でした(笑)。

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