合羽橋道具街

マルゲリータのトマトがうまく切れない。

包丁の切れ味が悪いので、身が潰れてしまうのだ。
きちんと刃を研げば良いのだろうが、少し良い包丁が欲しくなった。それで、合羽橋道具街に見に行くことにした。家からさほど距離はないのだが、実は合羽橋に行くのは初めて。こんなに楽しいところなら、もっと早くに行くんだった。

番重がこんなに重なってる。アガる。
見てる端から手に取って、思わず買ってしまいそうになる。慌てるな、とりあえずひと通り見ていこう。

ワイングラス、オリーブオイルの注ぎ口、パーラ、大皿・・・
視野を広げたらキリがない。今日の狙いは包丁と皿に定めて、まずは本丸である包丁の物色をする。

家で少し予習してきた。なんせズブの素人。
お目当は三徳包丁。野菜、肉、魚、とりあえず何にでも使えるオールマイティ選手だ。素人中の素人のくせにこういうところだけは一丁前で、包丁専門店の「つば屋」「釜浅商店」「かまた刃研社」に狙いを定める。
中でも、老舗のつば屋は古びれた店舗もそのままに、客に媚びない姿勢がぐっとくる。どうせ買うならこういう店が良い。

 

あらゆる店をざーっと見て、少し頭がクラクラする。
店主と話しをする前に、どの程度の物が欲しいのか、まずはそこを決めないといけない。包丁は高価なものは天井知らずだとは思っていたけど、そこそこでお手頃なのはいくらから買えるのか。ある程度きちんと使えて、一生物とまでは難しいけど、愛着を持って長持ちさせられて、そして手が届く金額のもの。

そのくらいの包丁だと、大体15,000~20,000円程度が、最初の1本としては売れてるらしい。決して安くはない。いや、10年20年と考えれば、むしろ安いのか。

切れ味よくて憧れるハガネか、手入れの楽なステンレスか。
和包丁も良いけど洋包丁の方が使い方に合ってるのかもしれない。
ダマスカス風の見た目も美しいが、シンプルで無駄のないブレードも通っぽい。
「どうせ買うなら良いものを」の精神と「所詮素人なんだから」の弱腰がぶつかり合う。あーーーーー。

 

買えない。
考えれば考えるほど買えない。

ちょっと、ひとまず忘れようかな、包丁は。

 

皿だ、ピッツァを乗せる大皿を見よう。
好みは和皿の素朴な焼き物で、お手頃なのもいくつかあった。

うーん、どれも良い。そして包丁を見たあとなので、比較的手が届く金額。
全部買うか。いやちょっと待て、向こうの店を見ていない。もっとあるかもしれない・・・

 

道具街をあっちこっちと彷徨う男。
時刻は17時、店のシャッターが一斉に閉まりだす。
えーっ!5時までなの?

結局今日の戦利品は、無くしたワインボトルの蓋(2個 580円)だけ。
次は買います、きっと、たぶん。
僕はふらふらとした足取りで、上野の飲み屋横丁に消えていった。

 

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