大阪、堺の實光刃物

包丁は以前から欲しくて、合羽橋道具街をうろうろしたりもしたけれど、結局決めきれぬまま今に至る。自分の切れ味の悪さには辟易したが、次に大阪に行ったら今度こそ堺で買おうと決めていた。

堺は言わずと知れた刃物の街で、打刃物の生産では600年の歴史を持つ。プロの料理人包丁では国内シェア98%。世界中からも注目されている。
堺包丁とひと口に言ってもブランドは多数あり、下調べのあといくつかの老舗ブランドに的を絞った。果たしてそこまで立派な包丁が僕に必要なのかは迷ったが、自分の手がとどく範囲内で、なるべく良くて長く使えるものを買おうと決めた。腕のない人間ほど良い道具を選ぶべきだ。

奥様の実家に帰った折に時間を作って、梅田の千日前道具屋筋に行って「堺一文字光秀」をチラ見。ショーケースに所狭しと並ぶ様は圧巻である。やや気後れしつつも店内をひと回りして次へ。

 

難波スカイオ5階にある「實光刃物」へ。今回の本命。
ここはデパートの中にあるショールームなので敷居も低く入りやすい。ショーケースを覗く僕にお姉さんが声をかけてくる。

「どんなものをお探しでしょう」
「ええと、三徳包丁をちょっと探しているんですけど」

それからいくつかの特徴を説明してもらい、その日は時間切れでパンフレットだけもらって退散。でもここの包丁を買うと決め、後日堺の本店に行って悩み抜いたすえ一本を購入する。

切れ味は良いがマメな手入れが必要なハガネか、扱いの楽なステンレスかで迷ったが、店員さんの勧めもあり、憧れでもあったハガネに決めた。

刃身は青砥スーパー黒打、柄は和包丁のような白系に憧れていたので、八角水牛口輪柄に付け替えてもらう。黒打刃とのコントラストが美しい。

「堺實光」の下に名入れをしてもらい、世界でただ一つの自分の包丁ができてウットリである。

光の当たる角度によって表情が変わるのもお気に入り。

これで一番最初に切ったのはトマト。
その吸い付くような切れ味にびっくり。ほとんど包丁の重さだけですくっと切れていく味わい。葉物野菜ももちろん、ピーマンなど面白いようにストンと切れる。刺身の柵をこれで引いてもエッジが立つだろう。

一番驚いたのは、明らかに料理が美味しくなること。切り口はその味にも直結するのだと使ってみてわかった。

奥様にも試しに使ってもらったが「料理したくなる包丁」と感動のレベル。今まで使ってた包丁が切れなさすぎたけど、それにしてもここまで変わるのか。

ハガネを選んだことでかえって丁寧に扱う愛着。当初の予算よりオーバーしたが、大満足。錆びさせないように、いずれは砥石も揃えて、ずっと大事に使いたい一本である。

 

 

 

 

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