ラ・ピッコラターヴォラ 〜永福町

久しぶりにピザランチへ。

東京には食べたい時にいくらでも選ぶことができるほど、様々なピッツェリアがある。せっかくこの場所に暮らしているのなら、味わえる時に味わっておこうじゃないか。

真っ先に思いついたのは、清澄白河のベッラ・ナポリ。生地を手ごねしている名店で、いつかはと思いながら未だ行けてなかった。調べてみたら残念ながらディナータイムのみ。今日はおひとりさまランチの予定なのでまた次回。では中目黒のダ・イーサはどうだ。有名すぎる有名店は定休日だった。

頭の中の錆びついた引き出しを開ける。うーん、どこかあったか。
あ、そうだ、永福だ。永福町「ラ・ピッコラターヴォラ」を思い出す。

ラ・ピッコラターヴォラは、赤穂のさくらぐみに次ぐ2番目の真のナポリピッツァ協会認定店である。関東では1番目。認定店であるか否かはほとんど気にかけておらず、評判を耳にしての訪問なのだが、心がねじ曲がっているうえに屁も臭いところのワタクシは、真のナポリピッツァ協会をむしろ懐疑的な思いで見ていた。

こんなご時世でもあるので、ランチ営業をしてるか電話で確認する。やってるというので13時に予約を入れる。永福町まで行って満員御礼では気持ちのやり場に困る。わが家から新宿方面へ出るにはバイクの方が早いので、セロ男にまたがって12時前に出発。昼間っから酒を飲むなんてことは、たまにはあるけど今日は無い。

駅前のバイク駐輪場に停めて商店街をぶらぶら。随分早く着いてしまった。持て余して20分前だけど突撃する。かなり早かったにも関わらず、すんなり案内してくれた。

店内は思ったより奥に広い。席数はカウンター入れて70席というからかなりの大型店。住宅地でもあるので煙突をどうしてるのか気になるところ。平日にも関わらず、半分かそれ以上埋まっているのは流石である。

ピッツァイオーロは小柄な女性。性別はもちろん関係ないけれど、有名店のこのポジションを獲得するにはかなりの訓練を積んだはず。パスタ担当とホールの2人に加え店長らしき方の計5人オペ。雰囲気は和やか。
メニューが運ばれてきて目を通す。ロッソとビアンカからそれぞれ好きなものを選ぶ、平日限定というハーフ&ハーフでお願いすることにする。

「ブファリーナとクアトロフォルマッジ」をチョイス。
ブファリーナとはモッツァレラ・ディ・ブッファラ(水牛のモッツァレラ)を使ったマルゲリータだが、ディ・バッカ(乳牛)でもむしろマリナーラでも同じ価格なのが不思議。さらにチェリートマトが乗ってくる。クアトロは蜂蜜なし。別添えで頼めるのかはわからないけど案内はなかった。これにサラダとドリンク(アイスコーヒー)が付いて税込2,100円。

サラダがすぐに運ばれてくる。
野菜の鮮度が良い。シンプルなオイルドレッシングも美味い。奇を衒う点はないけどちゃんと美味しい。中でもチェリートマトが瑞々しくてすこぶる美味。フルーツのように甘い。さらっと平らげてしばらく待つ。

残念ながらピッツァイオーロの手元や窯の中まではあまり見えず。肩の動きや身体の動作から、あ、今伸ばしてるなとかイメージする。ピッツァは2組前まで出ておらず、来るまでに少しかかった。ゆっくり楽しめるよう意図的なのかもしれないけど。

「お待たせしました」とピッツァイオーロ自ら運んでくれる。
サイズは約30cmと大きめ。カットは6ピース。ひとりで食べ切るには少し大きいので、女性限定でミニサイズを用意してるのは良心的。まずはブファリーナからひとくちガブリ。

「ふぉ・・・うんめえ!」

のけぞる。

ひとくち目、ファーストコンタクトはとても重要だと思う。その店の印象をほとんど決定づける。生地はモチモチタイプなのに重くない。もっちりなのに軽いって理想ではあるけれど、どういうことなのか意味がよくわからん。小麦の風味も良くサクサクと食べ進めることができる。生地の塩味は控えめ。真のナポリピッツァ協会レシピだと結構塩っ辛くなるはずだけど、この辺は調整してるのかも。粉は当然カプートだろうけど、癖がなく僕の思うカプートのイメージとは随分違う。サラダにも乗ってた果実のようなチェリートマトが、ソースの酸味を良い塩梅で和らげる。

コルニチョーネが旨すぎて悔しすぎる。取り立ててエアリーなわけでもないが、この軽さは何だ。僕はこのコルニチョーネを作れない。おこがましさ極まりないけど、なぜかすごく悔しかった。このコルニチョーネを作れないことと、どういう道筋を辿れば近づくのさえわからない自分が、とにかく悔しかった。ガレリアとは明らかに違う方向の旨さ。

クアトロもおいしい。たまにくるゴルゴンゾーラのクセも嫌味がなく、ちょうどいい塩梅。蜂蜜なんかなくたって充分美味しく食べられる。
例によって数切れ冷めてから食べたが(意地が悪いのよ)、固くはなるもののもともと持ってる生地の軽さは最後まで続いた。一枚食べ切るにはどうしたって最後の方は冷めるのだが、これなら辛くない。量的にはやっぱり少し多いけど。

軽い生地といったって、薄力粉を入れたりオイルを入れたりとかそういった類の話ではない。材料はあくまで4つのみ。それでここまで変わるのは、窯の違いが大きいと思いたい。

本当に美味しかった、ごちそう様でした。
挫折と感動の両方を味わって店を出る。もうひとつ付け加えるなら、接客も申し分なくて気持ちよく食事ができる良店。また食べに行きたいかと問われれば、間違いなくイエスである。

 

 

 

 

知人家族を招いてピザパーリー

鉢植えしたバジルを収穫。今年は勢いがイイ。

奥様が普段からお世話になっているご家族を招いてピザをふるまう。窓全開、手指消毒、マスク着用の感染対策をしつつしめやかに開催。我々としても重要なテストケース。ご夫婦と小中学生の男の子3人。加えてうちの奥様の計6人前。
ピッツァや前菜をあれこれ考えて、前日までに仕込みをし、ガレージを片付けてハーレー2台を表に出し、大きめのテーブルを自作して、準備万端ご家族の到着を待つ。

前情報では子供たちは野菜嫌いとのこと。

これは、結構困る。ほとんど野菜主体のメニューである。どの程度の嫌いなのか、食べられる野菜もあるのか全部ダメなのか、詳しいことは何もわからないまま当日を迎える。あまり媚びることはせず、それでも食べられそうな野菜を選んだけど果たして。まあ、駄目なら大人が食べるデショ。

・生ハムとベビーリーフのサラダ
・チャンフォッタ
・マルゲリータ
・ミートソースと茄子
・トレフォルマッジ エ ノーチェ
・自家製ベーコンとジャガイモとコーン
・テリヤキチキンと葱とエリンギ
・フルーツピザ(イチゴとブルーベリー)

の予定でスタート。

中一の長男坊は野菜もオッケー。下二人が食べられる野菜はトマトとジャガイモのみ。基本肉が好きだがベーコンもダメって子がいてもう何食ってんだと。最終的には「わがままピザ作ってー」のリクエストに答えて、ミートソース&チーズ&チキン&半分だけベーコン乗せピザを作る(笑)。野菜関係は主に大人たちが平らげる。

偏食だけど3人とも可愛い子たちで。焼くとこ見たいっていうから台所にあげてワイワイやる。久しぶりに楽しい夜。当日の写真は一切ない。その余裕ナシ。

宴のあと。

幸いというか何というか、一切残すことなく綺麗に食べてくれて。お土産ピザも持たせて解散。大人たちは満足してくれたようだけど、子供たちにはどうだったろうか。子供ながらに気使って「美味しかったです!」なんて言ってくれたけど。いろいろと勉強になったなあ。

野菜食えないパターン、今後どうするか。
たぶん、どうにもしない(笑)。

イチゴは季節じゃなかったので今回は省く。これは試作時。

 

 

 

 

ROCCBOX開封の儀 〜バンザーイなしよ

今から一週間前のこと。

思ったより早くROCCBOX届く。from UK.

さっそく開封の儀。

いいじゃんかー。

付属のガスバーナー。

米国と欧州仕様は違うらしく。付かないのでアダプターをポチる。翌日には届く。

ウッドバーナーも同時購入。一緒に送ってもらった方が安いので。

よっしゃ、焼いてみるかーと意気込んだのもつかの間、ちょっと気になる点が。

本体のフレーム、ちょっと凹んでる。よね?

箱にも何かが当たった跡が。見事にクッションの無いとこ。

届いた時から箱の取っ手がもげてたのよね。

これは運搬中に落としたんじゃないかなあ。重量的にはOoni Kodaよりかなり重い。イギリス〜日本間のやり取りのメンドクサさにこのまま使うこともよぎったが、この金属フレームはかなり頑丈に作ってある箇所で、これが凹むくらい大きな衝撃が加わったという事実が怖い。せっかくの新しい窯、気持ちよく使い始めたい。

現地のバイヤーにかくかくしかじか説明して、写真を撮って送る。バイヤー自身に落ち度はないのだが、平身低頭の態度で真摯に対応してくれる。取っ手の破損など発送時には明らかに無かった現象なので、運送会社に問い合わせつつ、保険を申請中とのこと。

結果が出るのにあともう数日。とりあえず御預けを食らい中。

 

 

 

 

スランプなんて10年早いのよ

FedExでドゥフック届く。

未だHOBARTミキサーは使えず。今日も相変わらずの手ごね。スパイラルでもダブルフォークでもないこのJ型フックは、どんな仕事をしてくれるのか。

友人連中からピッツァのオーダーがあり、何枚か焼くことにする。当初道具を持ち込んで、焼きたてを食べてもらう予定だったんだけど、いろいろあって結局家で焼いたものをデリバリー。冷めたピッツァは不本意すぎるけど仕方ない。

相変わらずマメに焼いてはいるけれど、最近、うまく出来ないのである。

生地も焼きもなんだか満足できない。友人宅へ持っていく分も納得できなかったので、失敗したと詫びて持っていくのをやめようかとすら思ったが、向こうはアテにして待っているのである。ワインを用意してピッツァを楽しみにしているのである。承諾した以上、今さら駄目でしたと手ぶらで行くわけにもいかない。美味しくなかったとしてもこれが今の実力と差し出すよりないのである。

言い訳めいたことは言うまいと思ったが、軽いジャブを打ってしまう自分の弱さよ。

結局、食べてもらった感想は意に反して生地が素晴らしいと大好評で、なんとも複雑な思い。嬉しいことには違いないが、自分自身が納得してないのだから修行が足りん。スランプなどとは10年早いのよね。それにしても、人の味覚や好みは千差万別だなとつくづく思う。

きっと、100%満足いくゴールなどないのである。
わかったと思えば悩み、悩んではまた工夫する。その繰り返し。満足したらそこでゲームセットだぜ。

ということで、ROCCBOX買いました。

 

 

 

 

自家製ベーコンを作る

これまでピッツァに使うベーコンは、近所のスーパーで普通のものを買っていた。

井草正著『自然流ハム・ソーセージ・燻製(農文協)』は30年も前の本だけど、これによれば「市販品は燻煙液に浸けただけのものや、それすらも略され、塩漬け肉をケーシングに詰めて水煮しただけのものが多く、本来の燻製品として販売されているものは少ない」とある。なぜなら、燻煙(食材に煙をかけて燻すこと)は手間と時間がかかるからである。さらにいえば、その代わりにいろいろな添加物が入っている、ともある。

師であり友人でもあるマンチズ先輩も、店主が店先で燻した自家製ベーコンをピッツァに使う。自分で作れば余計なものは入れないし、なにより市販品よりはるかに旨い。僕もいずれはやりたいと思っていた。

豚の三枚肉を買ってきて、いざ自家燻製のスタート。
ベーコンに限らず燻製というものは基本的に、塩漬けし→塩抜きして→乾燥させ→燻煙する。これといって難しい手順はないのだが、とにかく完成までには時間がかかる。初の自家製ベーコンは、奥様が率先して処理などをやってくれた。

まず塩漬け。
食塩や玉ねぎ、少量の砂糖や香辛料などを肉に擦りこむ。この工程は全部奥様がやってくれたので、なにを擦りこんだか僕は詳しく知らない。これをペーパーなどで巻いて水分を切りながら、袋に入れて冷蔵庫で漬けこむ。毎日ペーパーを変えて肉の状態を確認するなど、すべて奥様がやってくれた。僕は生地づくりに集中できる。

4日間ほど冷蔵庫で漬けこんだら塩抜きをする。
このままでは塩っ辛くて食べられないので、浸透した塩気を適度な濃度にするのである。これにも流水法と溜め水法とあるようだが、どうやら流水法がうまくいくようなので、ボウルに肉を入れチョロチョロと水を流し続ける。これも数時間という単位でやるので水道代が気になるところだが、手間暇かけて作ったベーコンが塩っぱくて食えないという由々しき事態を避けるためには、我慢のしどころである。

端を少し切ってフライパンで炒め味見をしながら、5〜6時間は塩抜きしただろうか。そろそろイイだろうという段になって、むしろ重要な工程である乾燥にうつる。水でびちょびちょにした後はしっかりと水分を抜かないといけないなんて、こう書いてても実に手間と時間がかかるな。

湿った状態で燻煙すると、煙と何らかの成分が水分と結びついて酸味になってしまうという。塩っぱいベーコンも勘弁だが、酸っぱいベーコンもこれまた泣きたくなる。燻製は一見すると、燻煙が重要な作業に思えるが、最も大事なのは塩抜きと乾燥らしい。

流水に浸し続けた肉に金串を刺して、ガレージに吊るして扇風機で風を当てる。一晩。
この間も、奥様は夜中に起きて肉の向きを変えたり、まんべんなく乾くように風の流れを変えたりしてくれた。コロナで惜しくも逝去された有名料理家の名言を借りれば、「料理は愛情!」である。

 

長かったこれまでの工程を終え、いよいよ燻煙!
燻煙箱は調べればいろいろなものがあって、キャンプでも使える安価な段ボールタイプのものもあるが、そんなものわざわざ買うまでもなくガレージに転がっているのでそれを使う。要するにスモークウッドが消えることなく燃え続け、煙を充満できればイイのである。むしろどこでやるかが問題。煙や匂いが広がってご近所さんに迷惑をかけたり、ましてボヤ騒ぎにでもなったら大変。考えた末、勝手口裏の狭い中庭で密かに燻すことにする。

段ボールを切った張ったして燻煙箱を作る。中に網を仕込んで肉が乗るように。下段には桜のスモークウッドをセットしてバーナーで着火する。

箱をかぶせてしばらくすると火が消えてしまう。
どうやら酸欠のようなので、下側の隙間を大きめに開けて空気の通り道を作ると、消えずに煙を出し続けてくれた。この状態で4〜5時間燻す。匂いや煙が気が気じゃなくて、ちょいちょい外に出ては「なんか作業してますよ〜火事じゃないですよ〜」アピールを誰ともなくする。箱周辺は結構匂いが上がるものの、少し離れるとほとんどわからないのだが。

4時間くらいスモークして一度出してみる。

おお!飴色でいい感じ。

もう1時間ほど追いスモークして完成!無事5時間を乗りきる。

いいじゃんか〜。

切ってみる。

炙って食ってみる。

うんまっ!

香りヤベー!

あー、今まで食ってたのはベーコンという名の偽物だったのね。これからピッツァには本物を使います!

奥様とは今後はスパイスを試してみたり、レシピを確立しようと話しています。時間かかるからもっと多めに作ろう。そもそも燻製は保存食であるわけだし。

フードシーラーで真空保存して出番を待つ。