梅雨入り前にもうひとっ走りしときたいよね。
それで、どこかにうまいカレーはないかと走りに行った。時折そういうことをしたがるんだな。
この日の僕は、タイやネパールといった本格的な味よりも、どこの家庭ででも出るような、素朴で懐かしいカレーがよかった。夕刻に隣の家から鼻腔をくすぐる、あの玉葱の効いたまろやかなカレーである。
川崎までのんびりと下道を走り、浮島ICからアクアラインに乗る。
長かった浮島入口の工事も終わって、走り慣れた右への合流から本線へ。出発が遅かったこともあり海ほたるには寄らず木更津金田。下道に降りてとりあえず南下する。
素朴なカレーが良いとはいったものの、千葉まで行くならトッピングくらいしてもいいのではないか。でも、カツカレーという気分ではない。もう少しライトにいきたい。アジフライだとカレーが邪魔。イカリングあたりがちょうど良い。しかしイカリングカレーを出す店が房総にどれだけあるか。コンビニでコーヒーを啜りながら検索する。
カレーパトロールの写真の中から、エビフライカレーが目にとまる。気取ったところのない、ごく普通のカレーである。エビのプリプリとした食感と風味を想像する。悪くない。いやむしろ良い。店を調べる。まるよ西条店、鴨川である。今日の昼飯はこれに決まり。しかしメニューを見ると、カレーはカツカレーしか載ってない。なぜだ、写真は古いのか。もうエビカレーはやってないのか。とにかく向かってみる。
13時まるよ着。
まるよ西条店は大変な人気店らしく賑わっている。車もいっぱい。中でも有名なのは、鮪の鉄華丼(薔薇の華みたい)やサーモンいくら丼など。いつもなら王道を選ぶところだが、今日はエビフライカレーが食べたいのである。願わくばメニューがあってくれ。カツカレーのみだったらどうするか、カレーを取るかエビフライを取るか、最後まで決めきれぬまま暖簾をくぐった。
「はい、らっしゃいまっせー!」
威勢のいい声が飛ぶ。店内は広いがほとんど満席。紙に名前を書いて少し待つと、一席だけ空いてるカウンターに通される。今日もおひとりさま特権。
メニューに目を落とす。
ネットで見たメニューのままである。やはりカレーはカツカレーしか載ってない。ぐぬぬ。
「すみません」
「はーい、お決まりですかぁー?」
恰幅の良いお兄さんが、メモから顔を上げずにこちらを伺う。
「あの、カツカレーは、カツをエビフライとかに変えられます?」
お兄さんが初めて顔を上げて僕を見る。一瞬火花が散る。
「トンカツを、エビフライ2本に変えることはできますよ。同じ値段で」
「ああ、じゃあそれで!それで」
「えーっと、カレーの上に、エビフライが乗っかってくる形で?」
「いいですいいです」
「ルーに乗っちゃいますけど」
「乗っちゃってください」
一瞬お兄さんがフッと笑ったように見える。
「昔ね、出してたんですよ。エビカレーって」
「あ、実はですね、写真で見まして」
「3番さん、エビカレー!」
厨房が少しザワザワする。「写真で見たって・・・」と話しているのが聞こえてくる。無事任務完了で胸をなで下ろす。
「お待たせしましたーエビカレーです」
エビフライの存在感はかなりあるものの、カレーは至って普通である。冷凍のグリーンピースなんて乗っちゃって。いただきますとひと口頬張る。普通だなあー、普通に美味い。そして僕は普通に美味いカレーが食べたかったので嬉しい。とろけた玉葱も甘い。いいなあ、美味いなあ。
エビフライはかなり食べごたえがあって、これも特別に美味いかといえばそうでもなく、かと言って物足りないわけでもない。トンカツソースをかけて、ルーに潜らせたりしてパクつく。真っ赤な福神漬もここに極まりといった感。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございます。1,045円になります」
▽
満足して店をあとに。
まだ時間はある。晴れ間も夕方までは続くと言っていた。このまま南房までぐるっと回っていくとするか。
夕暮れの海ほたるはすっかり雲が厚くなって。もうすぐ長い梅雨が始まるな、と思った。
















