陣馬形山キャンプ場 ~長野県 天空のキャンプ場 二日目



 

4時30分、アラームの音で目が覚める。テントから顔だけ出すと、薄曇りだがまずまずの天気。のろのろと這い出して伸びをする。日の出は4時57分。とりあえず体操っぽい動きをしながら山頂まで上る。指が痒いと思ったら、ブヨに4ヶ所も食われてた。

山頂へは一番乗り。5時を過ぎても雲に遮られて、なかなか太陽は顔を出さない。徐々に人が集まってくる。東の空をぼんやり眺める人、乳くりあうカップル、煙草を吸いながら待つ人。南アルプスの向こうからようやく光がこぼれて、いよいよご来光。照り返しを受けた中央アルプスも美しいが、少しもやがかっていて納得できる一枚はまだ撮れない。
テントに戻って湯を沸かす。

モンカフェに湯を注ぎながら、コーヒーにはもう少しこだわるべきだといつも思う。高級な豆を使うということではない。キャンプの食事は「手を抜く弱さ」を許す寛容さが必要だが、コーヒーに手を抜くのは得策でない。ミルを持参して豆を挽くのは面倒だとしても、せめてドリッパーを用意して、ふんわりと豆がクリーミーに膨らむ幸せを味わうべきだ。紅茶好きならまた話は変わってくるのだが、僕はコーヒーが好きだ。新しいドリッパーも持参しているのに、スーパーでついモンカフェを買ってしまう自分の弱さ。なかなか人生の達人にはなれんな。

今日はテントを張りっぱなしにして、身軽になって走るベースキャンプ方式。工具とお風呂セットと地図だけ鞄に放り込んで走り出す。下調べをしてこなかったが、マップルにはいくつか林道が載っていた。昨夜はワインを飲みながら、パラパラと地図をめくって道筋を考えた。この時間もまた、楽しいものだ。

一番近くにある「陣馬形山林道」に向かってみる。

木漏れ日の舗装路をのんびりと流す。こんな時のセローは「だらしない走り」を満喫する事ができて、格別に気持ちが良い。それは線を繋いで行くような走りだ。WRだとなかなかこれができない。思うままに脇道に入ってみる。荒れてタイトな峠道をぐねぐねと上がっていく。道路脇の森に猿が座っていたり、イタチだかテンだか、にょろっとした可愛いヤツが横切ったりする。お邪魔します。

5kmほど走ってゲート封鎖。通り抜けできず。引き返してまた脇道に入ると、ダム湖?が突然現れたりする。自分がどこを走ってるのか良くわからなくなる。ナビなど無いのでそもそもわかってないが。


周辺をさんざん走り回ったけど「陣馬形山林道」がどうにも見つからない。道端で地図と睨めっこしていると、軽トラに乗ったじいちゃんが隣に停まった。

「どこさ行くのー?」

「えーと、陣馬形山林道ってどの道っすかねぇ?」

「これ真ーっ直ぐ上がってけば、いやでも出るわー。」

「あーそれ、今おりてきた道なんですけどねぇ。通行止めの」

「通行止め?行けんかった?行けるやろー、だめかー?」

「その林道ってアスファルトですか?砂利道?」

「もうほとんどコレ(アスファルト)やわー」

どうやらずっと走ってきた道が陣馬形山林道らしい(たぶん)。舗装化が進んでいるようだ。そういうことにしよう。ならばと次の林道、林道女沢線を目指す。

女沢林道へはどう入ったか、よくわからなかった。駒ヶ根カントリークラブを左手に過ぎて、高鳥谷山方面に上って行ったのではないかと思う。道は狭く辺りは途端に林道めいてきたが、こちらもしばらくは舗装路が続いた。こんなに走っているのに未だダートを走れない。軽い落胆の中セローを進めると、道は唐突に砂利道に変わった。

多少ガレたところもあるが、基本的には走りやすいフラットダート。セローが生きてくる。空気圧を落としたツーリストは良く食いついた。なかなかの勾配。しばらく行くと突然の分岐も現れて、ひとまずエンジンを切り、水分で喉を潤す。

暑い。照りつける日差しと蝉の声。この山奥で、誰ひとり居ない一瞬の恐怖。ここでもし、エンジンがかからなかったらと頭をよぎる。オホーツク海に小船を漕ぎだす恐怖といえば大袈裟か。ひとしきり山の空気を味わって汗を落ちつけると、事も無げにエンジンはかかり、その場をあとにした。




道の駅南アルプスむらで遅めの昼食。レストラン「野のもの」で、肉を一切使っていないという「雑穀バーグ」のランチ。もはやハンバーグとカテゴライズして良いのか、はじめて食べる不思議な味。添えられた玉葱ペーストと、インゲンをぐちゃっと混ぜて食すと良い感じに。身体によさそう。ごちそうさまでした。

その後、伊那市街をブラブラと探索し、昨日と同じスーパーで買い物をして望岳荘で汗を流し、氷が溶けないうちにサイトに戻る。今日は土曜日だし混雑するかもな、と覚悟を決めて戻ると案の定、テントの芋洗い状態。バイクと車が昨日の倍以上も増えている。前泊の特権で一等地に張っていたが、1メートル隣にソロのおじさんが幕営。ちか。

さて、日没を見に行ってからメシの支度。今夜の酒は地酒「今錦 生 本醸造」
語れるほど明るくないので、旨いとしか言いようがない。

ツマミは鰹の刺身に玉ねぎ、大葉、ニンニクの薬味を豪快に乗せて、生姜醤油で頬張る。チーズとオリーブオイルを買ったので、トマトとモッツァレラのカプレーゼと小洒落てみたり。



酔いも回ってきて辺りも少し賑やか。酒もつまみも平らげて、寝床に入る。5時に目覚ましをセット。明日は撤収して帰路へ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。