ミニマムキャンプに見る美しきネイチャーストーブ

グーグルマップをぼんやりと眺めながら、週末の釣ーりング計画を立てる。

今週は鹿留川まで足を伸ばしてみようか。新しい川の開拓もそろそろしたいところ。渓流釣りが解禁となってから、今年もホームリバーである道志川の年券を購入し、暇を見つけては下手くそなテンカラを振りに出かけている。

相変わらずちびヤマメを後ろに飛ばす程度の釣果なのだが、我ながら飽きもせず、片道3時間の下道通い。

セローのオイル交換をして、ブレーキパッドも換えるかと外してみたら、まだ5mmくらいあったのでそのまま戻し(なぜか全然減らない)、ウェットゲーターやシューズをしまって準備万端。あとは早起きして向かうだけ、とベッドで見た天気予報がみごとに雨。

がーん。だな。

合羽を着て行くことも考えたが、結局折れた気持ちは回復できず、朝ダラダラと寝過ごす。

お昼を過ぎて予報通り雨が落ちてくる。次第に土砂降りに。これは行かなくて良かったかも。
することのなくなった日曜日。ちょっと早いな、と思いながら缶ビールを開ける。ぷはー、これはこれで悪くない休日。youtubeで渓流釣りやソロキャンプの動画を見ながらグビる。そんな映像を見ながら、そろそろキャンプに行きたいなあと思う。

モニターの向こうでは、W650に乗るソロキャンパーがモーラナイフでバトニングしている。革の手袋をしてフェザースティックを何本か作る。麻紐をといて火口とし、ファイヤースターターでなんどか火花を飛ばす。僕も口に運んだビールの手が思わず止まる。
麻紐にボッと着火して、すかさずフェザースティックをかざし、杉の枯葉を加えて一気に燃やす。ストーブに移して薪をくべる。徐々に火が安定して、彼も僕も安堵のひと息をつく。ビールをもうひと口。さぁ、君も飲めよ。
ザックひとつというミニマムなキャンプスタイル。すごく、良い。

厳選された良い道具を使っていた。単に高価なものというのでなくて、例えば彼のテーブルは廃材を利用した手作りである。ザックの大きさに合わせて作ってあり、使い込んで味がある。コッヘルは真っ黒になった飯盒がひとつと、LODGEのスキレット。
道具を削ぎ落としすぎると、それはそれで味気ないキャンプになるが、スキレットはそのあたりの彼のバランスの良さが見てとれる。

彼の使う焚き火台に目が止まる。Picogrill 398。
僕が一目惚れしたネイチャーストーブである。

ピコグリルはスイスSTC社の焚き火台で、小さい方の398は重さわずか450g。A4サイズに畳めるスマートさにして、見た目によらぬ堅牢さ。なんと言っても他に類を見ないビジュアルの美しさである。ストーブ難民だった僕は、サイズ感、機能美、その全てにおいて魅せられた。

焚き火台にしてはやや高価である。それ以上に、欲しくても品薄で手に入りにくかった。意を決して購入を決めた時には売り切れで、仕方なくユニフレームのストーブを使っていた。

 

思い立ってもう一度検索してみる。
あ、売ってる・・・。
大きい方の760はすでにSOLD OUTの文字。
とりあえず2本目のビールを開ける。
窓の外ではやむことのない雨音が打ちつける。

 

映像の中で彼が、ピコグリルに乗せたスキレットで調理を始める。スペアリブがじゅーという旨そうな音を立てた。あぁ、これは駄目だな、抗えそうにない。

ポチ。

 

彼のひとりの夜と、僕のひとりの昼がリンクする。ピコグリルに乾杯しようぜ。
僕が新しいストーブを使える夜は、いつだろうか。

 

 

 

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