わたしとあなた、二人きり

もはや身体の一部のようになったあなたとの別れが、こんなにも突然訪れようとは思っていませんでした。この日が来ることはわかっていたはず。心のどこかではそれを望んでいたはず。でも、あなたとの日々は辛い毎日ではあったけど、あなたは沢山の思い出を残してくれた。わたしに、沢山のことを教えてくれた。

あなたはそっとわたしの手を取って、心配ないよと言った。あなたがわたしの手を包み込んだとき、すごく安心できたわ。ああ、わたしは独りじゃない、そう思えたの。
あなたの束縛が時に窮屈にも思えたわ、ごめんなさいね。あなたを疎ましがるなんて身勝手よね。わかってる、わかってるけど、無力な自分が時に嫌になるの。あなたの支え無しには何もできない自分が。

今だから話すけど、あなたのもとを離れて冒険もしたわ。一人で電車に乗ったり、お風呂に入ったりね。驚いた?いつも一緒だったけど、一人でどこまでできるか試してみたかった。でも、でも、あなたの居ない世界は恐ろしかったわ。何が急にわたしの左手にぶつかってくるかわからないものね。不意に何かに引っかけて指がグキってなるかわからないものね。あなたに守られてるんだって、良くわかったわ。

ああギプス。わたしのギプス。もうすぐサヨナラしなきゃいけないの。
先生はあと二週間くらいはって言うけれど、わたしも強くならなきゃね。あなたに笑われちゃう。あなたが安心してわたしのもとを去っていけるように、わたしもう一人で大丈夫だよって笑えるように。あなたに過保護にされたせいね、指先が固まって動かしにくいけど、でもやるわ、わたしも強くなるわ。クラッチが握れるその日まで。

もう骨折なんてしないなんてー言わないよ絶対ー。
ああギプス。わたしのギプス。もうすぐSAYONARAしなきゃいけないの。

 

 

 

 

 

1件のコメント

    • nmindさま

      あらためて読み返してみても、くだらないっすね(笑)。
      ありがとうございます。頑張りまっす!

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