SSTR2015 ~ 完走後記

 

2日間を走り終え、ガレージにバイクを仕舞う。タンク脇の『209』に愛着がわいてしまい、なかなか剥がす気になれなかった。男子は皆ゼッケンが好きだ。ワイドグライドはレースとは真逆のところにいるオートバイだけど、ゼッケンを貼られた姿はどこか誇らしげに見える。「今日はわたくし、やりましたけど」とでも言いたげに、肩で息するようにエンジンは熱を打っていた。

走行距離527km。走行時間13時間28分。通過都道府県数7県。スタンプ押印数9。ゴール時間18時03分完走。

これが僕のSSTRの結果。2日間で走った距離1,015km。ハーレーであまり疲れた記憶はないのだけれど、帰りはさすがに首筋と背中がこわばった。だけど道中、ゼッケンをつけたNSR80で嬉々と走り去っていくサムライを見た。モンキーで完走した人もいると聞く。どこからスタートしたのか知らないが、尊敬を通りこして半ば呆れた。世の中、上には上がいるということだ。

スタート当日、午前3時20分。まだ真っ暗ななか家を出て、暁ふ頭公園に向かった。嫁さんもセローで見送りに。

午前4時公園着。すでに数十台の参加者が、日の出を今かと待っていた。元GPライダーの中野真也さんもおられて、ここからスタートするようだ。参加台数913台、参加人数955人。その誰もが、今日の主人公は自分だった。




by NOZOMI FUJIMURA PHOTOGRAPH .All rights reserved

 

厚い雲が水平線に横たわっていて、太陽がその姿を見せたのは、日の出時刻の4時27分を少し過ぎてからだった。にわかに撮影会が始まる。中には公園に来てから、思い出したようにゼッケンを貼る人もいる。構図を考えながら何枚か写真を撮って、これぞという1枚を事務局にメールする。すぐに返信あり。皆わりとのんびりムードのなか、これからバーベキューでも始まりそうで、それも悪くないなと思った。どことなくのほほんと、スタートの合図は切って落とされた。ぽつりぽつりと走り出していく。さて、ではわれも参ろうか。僕は長い一日のスタートを切った。

首都高11号台場線から乗りこみ中央道に入ると、背中から陽の光が照りつけた。追ってきたなと思った。太陽との追いかけっこが始まった。

 

第3回目となる今回は、参加者が1,000人にも迫り、もはや一大イベントだ。人数が多いせいもあって、道中あちらこちらでゼッケンを目にする。そして仲間意識というものが芽生える。もう後半は、荷物を多めに積んだおばちゃんのスクーターでさえ、ゼッケンはどこだと目を凝らしたものだ。とんでもない山の中の、聞いたこともない小さな道の駅で、ゼッケンを見つけた時はなぜか安堵する。お前は間違ってないよ、と言われたようで心強い。

スタンプだけ押して飛び出していく者もいれば、「もうやんなっちゃたなー」といった遠い目でソフトクリームをなめる人もいる。残りわずかになったコーンを口に放り込んで、くしゃっと紙をつぶし、結局はまた走り出していくんだけど。

ルートは予定通り松本まで中央道で向かい、そこからは下道でトンネルをいくつも抜けた。事前に立てたタイムテーブルでは、ゴールまでの余裕が25分しかなかった。そのせいもあって、高速ではアクセルを握る手にも力がこもった。無意識のうちに、いつもより1割増しで開けていたかもしれない。おかげで予定より1時間以上の余裕をもって中央道を降りた。結局この貯金を最後までキープした。

岐阜の山は土砂崩れでR471もR360も通行止め、という情報を地元のおじさんから聞き、迂回路を探して、五箇山で合掌造りを堪能し、富山の広すぎる空を見上げ、小雨の降る石川県に入った。どこかの道の駅で食べたポーク丼は、スープかと思うくらいつゆだくだった。

最後の道の駅高松では、あとはゴールゲートをくぐるだけという、緊張から解かれたライダーが集まっていた。まだ終わってないのだが「お疲れさま」の声も聞こえてくる。名残惜しむように一台、また一台と千里浜のゴールに向かう。僕も最後のスタンプを押して走り出した。無事にゴールした時は、感動より先によくわからない安堵感に包まれた。これで、旨い酒が飲めるという安堵感だったのかも。


しばらくゴールの余韻に浸った僕は、雨の中宿までさらにバイクを走らせた。富山県高岡市まで、ボーナスポイントなしのスペシャルステージ40km。ホテルに入った後は、雰囲気の良い居酒屋を探すこともせずベッドに気絶した。

 

 

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