続・どんぶりのはなし



 

職場の後輩とランチした時に、彼が頼んだ海鮮丼がやたら旨そうに見えて、その想いが週末まで尾を引いた。もう大人なのにたまにあるんだな、こういったことが。それで、天気も良かったので銚子までバイクを走らせた。大人なのか大人げないのかわからないが。ちなみに僕はサバ味噌定食を頼んだのだけど、それはそれで普通に旨い。だけど、海鮮丼は官能的に旨そうで、僕のサバ味噌は霞んでしまった。本日のオススメだけはあった。新鮮で旨い魚を食べさせる、そういったたぐいの店だ。隣のサバは青すぎた。

どこかの海まで行って海鮮丼を食べよう。のんびり寝ていたせいで遠方は無理だ。それでなくても遅い昼食には違いない。南房総へは行き飽きた感があるが、銚子は数えるほどしかない。銚子という言葉の響きには新鮮な魚しか浮かばない。もはや向かうべきは銚子以外ないと思い、僕はハーレーにまたがった。

ツーリングに出た際、食べ損ねるということが稀にある。たぶん、悲しいことだよ。停まるタイミングを逃したり、めぼしい店がついぞ見つからないということもある。「もう少し何かあるだろう」と先送りした時に限って、そういうことになる。そもそも走りながら鼻を利かすということは、なかなかむつかしいのだ。

銚子に着いた僕は、釣り船の行き交う漁港でほうけたり、地球が丸く見える展望台に上って屏風ヶ浦を眺めたり、あるいは遠くフィリピンの島々に思いを馳せたりした。気持ちのよい海浜公園で腰をおろし、打ち寄せる波を眺めた。高校生くらいの男子が三人、出来過ぎた映画のようにズボンの裾を上げて波打ち際ではしゃいでいる。銚子という場所はどこも眩しくて、気持ちが良かった。

結局、海鮮丼にはありつけなかった。全てはタイミングの問題だ。海鮮丼への想いは銚子の海に洗われて、コンビニの味玉おにぎりにとって変わったが、空腹のあまり包みを剥ぐのももどかしくむしゃぶりついた。カモシカにかぶりつくライオンのようだったと思う。そして、味玉おにぎりはビックリするほど旨かった。充分だと思った。

 

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