奥様が10日前から家を留守にしている。
とはいえ、夫婦仲が切羽詰まった状態にあるわけではない。くり返しになるが夫婦仲は悪くないと思う。仕事だ。自分の4速スポーツにPELICANのケースを縛りつけ、カメラと数本のレンズを仕舞い、ざっくりとした着替えを積んで、二週間は戻りませんと言って雨の関越道を走り去って行った。

仕事のことなので詳しくは書けないが、北は青森から南は九州まで、バイクで南下しながら撮影の仕事だそうだ。遊びではないので自由な旅とは違うだろうが、でも良い仕事してるなと思う。道中バイクにいくつかのトラブルがあったと言っていた。どうにか走ることは出来てるらしいが、わが家のハーレーは二台揃って手負いの馬。

僕のワイドグライドは、摩耗したカムチェーンテンショナーがついに粉砕して、オイルポンプから一式交換する憂き目に。そんなになるまで見過ごした自分のせいに他ならない。テンショナーのシューがいつか粉砕する、この事実はわかっていたはずなのにないがしろにした。対応の遅さが傷を広げた典型的なケースだ。過去に何度も味わったはずなのに、学習しない己の愚かさよ。

修理と車検のすべてが完了したと連絡を受けて、引き取りに行ってきた。僕にはいつの間にか慣れて、鈍感になってしまっていたようだけど、まず試乗したメカニックはそのノイズが異常であることをすぐに悟ったと言う。僅かじゃなかったのね。「オレノイズニビンカン」なんて書いといて、まったく恥ずかしい限りだ。予定通り、カムチェーン周りはスクリーミンイーグルの油圧式に総交換した。やる気のオレンジがおろしたてのパンツのようで、見えないお洒落。

引き上げたワイドグライドは、ものすごく静かだった。ノーマルマフラーという点を除いても、これが正常だったのかと改めて思い知る。修理代は車検も含めると決して安くない勉強代。にじゅうななまんえん。

誤解のないように付け加えるなら、これは部品代がかなりの割合を占めていて、なおかつ工賃は値引きしてくれたので、店側にはそんなに入らないのだと予想する。技術への対価、その意味では僕自身不本意な面もあり恐縮してる。

でもこれで、少しだけ浮気心が湧いていたワイドグライドに、またしばらく乗ろうと決心がついた。そんな浮気心出すからへそ曲げたのかもね。