道志川釣ーりング

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数年前に訪れた北海道の野営場で、僕はひとりの男性キャンパーを見ていた。陽も昇りはじめた早朝のことだ。僕より、4つ5つ年上だろうか。15メートルほど離れた高台にテントを張っていた彼は、濡れたウェーダーを脱いでロープに干すと、ふぅとひと息入れて椅子に座り込んだ。どうやら、朝マズメを終えてテントに戻ったところらしかった。近くには羅臼川が流れている。考えてみれば、釣り人にとってのここは天国だ。ここまで来て釣り糸を垂れないはずがなかった。

横に立てかけたタックルに朝日が当たる。ウェーダーからぽたぽたと落ちる雫が、先ほどまでの釣行を物語った。彼は湯を沸かしたあと、袋の中からパイプを出して、慣れた手つきで葉を詰めた。そして、火をつけて旨そうに吸った。

「釣れました?」僕は思わず声をかけた。「ええ、釣れましたよ。」彼は振り向いてそう言い、感触を思い出すかのように満面の笑みを向けた。彼は揺蕩う煙に目を細めて、満足そうにもう一服吸った。パイプの煙と朝日と釣り、僕の目にはその世界がとても大人に見えた。彼がライダーなのかはわからなかったが、こういう楽しみ方もあるなと思った。

あの時の映像が今でも頭に残っている。
僕はパックロッドと小さなスピニングリールをリュックに詰めて、ハーレーに跨がった。目的の半分はツーリング、もう半分は渓流釣り。いわば「釣ーりング」だ。
これまで、行動が忙しなくなりそうで躊躇していたのだが、思い立って出かけてみた。パイプは用意が無いからまたにするとして、先日キャンプした道志へ向けて走りだす。中央道に乗り込んで、道志川に着いたのは昼も回った遅い時間だった。

道志川での釣りは初めてで、まるで勝手がわからない。言い換えれば道志川に限らず、それほど川の事情に詳しいわけではないが、前夜に少し情報収集して釣り場を絞った。朝日屋という商店にバイクを停めて、愛想の良い店のおばちゃんとしばらくおしゃべりをし、遊漁券を年券で買って、おやつにとスルメを手渡され、いざ入渓。バイクは朝日屋の店先に。些細なトラブルを対処してたせいもあって(ナンバー取れかけてた)、実際竿を出したのは午後1時30分。

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店前から川に降りると、てんからとフライの先客が数名。少し下流に入って竿を振る。

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晴天、気温24℃。ぽかぽかとした温かな日差しが身体を包む。僕の技量はたかが知れてるが、こういった情景を楽しめる歳にもなってきた。釣れなくとも申し分ない気持ちよさだ。言い訳はこれくらい書いておけばいいかな。

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ルアーを替えたりポイント変えたりするも、気配なし。ウェーダーも長靴もないので釣り上がれず、朝日屋前でちょこちょこと投げる。2時間半ほどやってノーバイトのまま納竿。これからタマヅメというのに、持って行ったルアーを全てロストして強制終了。なんとも恥ずかしいデビュー戦ではあったが、楽しさと充実感と少しの悔しさがじんわりと。

年券を買ったこの心持ち、リベンジを固く誓い帰路に向かう。
次回はキャンプ&釣ーりングで訪れたい。

 

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